New Year’s Greetings 2021

東京オリンピックを控えた2020年は、事前の期待とは全く異なる様相を見せました。この波乱かつ寂静の世界をどう理解したものか釈然としないまま、子年は瞬く間に過ぎ、丑年を迎えた人も多いのではないでしょうか。

最近、友人と話していた折、古代ギリシャでは幾通りかの時間の捉え方があったことを知りました。まずは普段私たちが暮らす時の尺度であるクロノス。直線的に流れ、“その意味と目的が分からずとも、機械的にじわじわと進んでくる時間”*1です。対照的なのはカイロスで、必然的に起こった瞬間や、忘れ難きひとときなど、人の感性や主観で捉える意味的な時間とされています。不要不急な外出を控えることが世界的に求められた昨年は、人に会うことも旅行も観劇もままならず、このカイロスが著しく少なかったように思います。

このことで明らかになったのは、人間が人間たる意味的な時間の大半が不要不急とされた用事によりもたらされ、その実、不要といえることなど殆どなかったということです。

不謹慎かもしれませんが、歴史を振り返ると、ときに苦難や悲哀は芸術においては傑作を生み出す土壌となってきました。その意味では、この受難の時代も戦乱の後にルネサンスや江戸文化が花開いたような可能性を秘めていると思えば、これから先の時代も生きるに値すると思えるのではないでしょうか。

COVID-19等の影響でご家族ご親戚ご友人を失われた方の2021年が、どうか健やかで慈愛に満ちたものになりますように。また、愛する人に会えず、辛い時期を過ごしている方に一日も早く自由に会える日が訪れますように。そして経済的な困難に直面し、出口が見えないなか耐え忍ぶことを強いられている方へ連帯の意を表し、新年のご挨拶に代えさせていただきます。

皆さまにとっての2021年が、前年に起こるべきであった慶びをも内包する素晴らしい年になりますことを、心より祈念しています。

私たち環藝メンバーも、皆さまの豊かな意味時間の創出に寄与するべく、邁進いたします。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

*1 https://keisen.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=172&file_id=18&file_no=1

Mt. Fuji Rising Sun

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